八海山はやっぱうまい

ビールに舌が慣れ始めた近ごろの俺だが、未だに
「中生ひとつ」
と言うのに抵抗がある。「中生ひとつ」は20代後半の男と杉田かおるが言うくらいで、20代前半のアルコールに対して初心な俺はまだまだ、
「中ジョッキ生ビールひとつ下さい」
なのである。


先日俺は同期と飲んだ。集合場所の浅草橋は俺の職場からだと少し遠いが、なんせ気分高めていたし、何しろ俺が集合場所をここに決めた。俺のこの日のやる気は無限大だったと思う。
そして俺は俺なりに3人を観察してみた。「観察」なんて気持ち悪いけど、どうでも良い奴は観察しないからここは許して頂くとしよう。

Rさんは3人の中で俺と口を聞いたのは一番早い。俺は見かけによらず(多分見かけによらず)人見知りをする性格なので、Rさんとすぐに話せたのは少し奇跡であった。そんなRさんは自分の意見をしっかり言うタイプ。俺としてはその方が良い。俺は黙られるのに弱い。とはいえRさん、すごく律儀で優しい一面もあって、そしてすごく真面目。学級委員のような俺にとっては「クソくらえ」な真面目ではなく「適切な真面目」と言うのが当てはまる、と思う。

Nさんは元本屋のアルバイト娘ということで、俺はすぐさま本の話を持ち込む。活字嫌いな人に本の話をすると多分ウザがられる、と解釈する俺。でも元本屋のアルバイト娘というキャリアを信じ俺は気持ち悪いほど本の話をした。そんな話をしてウザイが先行したら、俺の社会人第一歩は見事踏み外しなわけだが、多分踏み止まったと思う。いや、踏み止まったと思わせてくれNさん。


Tさんは韓国語をマスターしようと日々努力しているらしい。韓国に2度ほど行った俺は、帰りの電車でひたすら韓国話をした。韓国の空港はとりあえずキムチの匂いがするよね、そんな類の話。Tさんは色々韓国語を教えてくれた。
「クサナギツヨシは韓国語でチョナンカンって言うんだよ。」
と教わった。Tさんの韓国語講座はこれで終わった。でもチョナンカンくらいは知ってた。


その飲みの場ではとりあえず問題のお方、Aさんの話で持ちきりだった。俺は3人の話すAさん列伝に終始笑っていたため、終盤、やや口角が痛かった。
とはいえ、Aさんは前回の飲みの時、俺のブログを読んでこう言った。
「正直言って読んでてムカツク」
一瞬空気の流れが止まる。そりゃ度胆抜いた。(ブログ見せた俺もバカすぎるが)
まぁ多分、Aさんは俺の
「社会への諦め」
という態度にムカついたのだろう。
この話を聞いた矢先にRさんはかなりAさんの反論をしたのだけれど、やっぱり間違いなく律儀で優しい、と俺はこの場面で確信した。


多分Aさんは「諦め」を「諦め」としか読んでいないのだろう。でも俺はそうじゃなく「諦め」の先を見据えている訳であって、その先にある物は何かを簡単に言うなら「覚悟」なのである。
「覚悟」をそえるには事前に「諦め」を迎えなくてはいけない。ただ、俺はまだまだ色々なことに諦めがつかない、そう、いくらでも飲めそうな甘い「午後ティー」みたいなしつこい野郎だから、こんな「諦め論」なんていうクソったれな文を書いているわけなのである。
そして俺がうまく「諦め論」をAさんに伝えられなかったことにももちろん反省した。


今日は調子にのって八海山を飲んだ。
「中生」も言えないイモっ子が、
「おばちゃん、八海山ある?」
なんて。冗談言うのも手取り30万になってから言いやがれ、俺。