インタビューアー

「24時間働けますか?」

というキャッチフレーズを聞いて、

「ああ、あれね。」

と頷いてくれる人は、今僕の周りに何人くらいいるのだろう。

「ファイト〜!」

と町中で叫んで、

「いっぱーつっ」

と返事して僕の人生の命綱を引いてくれる人は何人かいるのだろうか?

リゲインとかリポDとか、栄養ドリンクたちの存在は以外に大きい。特に「徹夜、残業のお供」的存在の彼らは、社会人の方々に重宝されている。

「今夜は忙しくて帰れないけど大丈夫!なんたって僕にはリポDがついてるんだから!」

と、前向きに仕事バリ男くん(バリ子さん)なのか、はたまた、実は自らの慰めなのか、その辺は知らない。
ただ残念なことに、その彼ら栄養ドリンクたちによって、社会人の過労死は加速されたに違いない、と思ってみたりする。

栄養ドリンクたちの、日本社会における生存領土は広い。薬局はもちろんのこと、スーパー、コンビニ、最近ではちゃっかり自販機にまで進出し、値段もリポDなら150円、ユンケルに関しては安くても200円。そしてその存在場所はオフィス内、もしくはビルの側。何という図々しさ、そして要領の良さ。間違っても町の駄菓子屋の自販機には居座らない。この販売戦略に、一時期僕は大正製薬等を相手に裁判を起こそうと考えたが、ここが米国ではないことを痛感し断念した。

さて、自販機に進出した栄養ドリンクたちに煮えを切らしそうなのは僕だけじゃない。この間、ある方にインタビューをした。

リポDたちのオフィス自販機進出、実際のところいかがなものですかねぇ?」

すると、

「正直言って迷惑極まりない。あの茶色い小ビンが、健康カバーしますよ、的なニュアンスを表現してるのがまず胡散臭い。愛想振りまいてる割りには内容量少ないし。それでいて金は取る。150円すよ!150!ニンジンエキスか何か使ってるみたいだけど。私なんて最近じゃ市場価値が落ちたのか何なのか、110円すよ!ヒドイとこは100円!昭和か?バブルか?って言いたいですよ!そりゃね、私は無果汁だし、オフィス内なのにスポーツドリンク掲げてるし、日常だと発熱した時くらいしか出番ないし。」

そこまで言うと、ポカリさんは俯いてしまった。大塚製薬のポカリさん。無常だったに違いない。


しかし、自販機の世界は実にシビアな所というのが、先日インタビューしたばかりのコーラさんの発言で感じ取れた。日本のドリンクたち、いや世界のドリンクたちのカリスマ的存在である「コーラ」 皆は彼をこう呼ぶ。


「世界基準」


彼の右に立つ炭酸はいないだろう。合法時、微量ながら混入されていたらしい「コカイン」から取られた「コカ」の頭文字。その後ろめたさなど微塵も感じさせない、その圧倒的カリスマ性はインタビュー中にも感じとれた。


「俺っちはね、別に何でも良いの。俺っちが町のコンビニやら自販機やらに置かれようがそうでなかろうが。だって、俺っちのこと知らないヤツっていないっしょ?というより、俺っち置かない自販機やらコンビニなんてないか(笑)何?栄養ドリンク?俺っちには関係ないね。土俵違うし。何?ポカリが怒ってた?相変わらず安い野郎だゼ。だからうちのアクエリアスに追われるハメになるんだ。俺っちなんかペプシに勝って当然と思ってるし。ペプシにはまだまだ甘味が足りねぇよ。でもな、うちのアクエリが言ってたよ。何だかんだ言っても、ポカリには勝てねぇって。ヤツはスポーツドリンク界を一生担ってく男だって。」

そう言うと、コーラさんは窓外に見える夕日に黄昏ていた。赤い缶の周りにかいた沢山の汗が何とも印象的だった。このコーラさんが言っていたポカリさんの話は、まだ本人には伝えていない。伝えるか否か僕はまだ少し悩んでいる。