紋白蝶3

【非現実】
「まぁ慌てるなよ。ローカルじゃあるまいし。都会の電車なんていくらでも来るだろ。」
ミスタータナカは常に平常心を保つ。追われることもなければ、追う必要もない。時計の秒針のように、1メモリずつを正確に「カチッ、カチッ」と歩んで行く。
「またリサの話かよ。もういい加減にしたほうがいいんじゃないか?リサはもういない、それで話を片付けてしまえよ。常態?この世に常態なんてあるもんかよ。日々変動することが人生ってもんだろ。地球の自転?トシオ、それは屁理屈にすぎない。この世にリサはいない。それが不動の事実なんだ。受け止めてくれ」
 ミスタータナカはこの話を何度となくトシオから聞かされている。ミスタータナカが飽き飽きしているのは当然であるが、それはミスタータナカの使命であり、人生である。
「トモコだ!トシオ、トモコの前でその面構えはなしだぜ。それじゃいくらなんでもトモコが悲しすぎる。トモコはこのことに関係ないし、罪はない。罪はトシオ、お前自身なんだから。」
トモコが現れることにより、ミスタータナカの存在は消去される。消えることがトシオのためでありトモコのためであるから。