釣りロマンを求めて(in漫画喫茶)

「マダイ釣ったど〜」
魚の尾を片手に、俺は夢から覚めた。
そう、夢。
別に魚釣りが好きなわけじゃない。ただ、この間
「釣りロマンを求めて」
この番組を見ただけで、俺はマダイを釣った。

「そうだ、釣り行こう」
まずサオを買う。そしてリール。エサ釣りは性に合わないのでルアー。ブラックバスを釣ったる。
どこで釣ろう?
綾瀬リバー…日本有数の汚濁リバー。
荒リバー…ブラックバスはまずいない。ここは妥協できない。
神奈リバー…俺は「ボケ担当」にはなれない。

とにかく俺は妥協した。魚釣りに妥協した。ブラックバス釣り越え。魚釣り自体を妥協。

ん?
何と妥協したかって?そりゃ
「漫画・釣り吉 三平」
を読むことである。だってリバーないし、道具高いし。

地下に続く階段がある。
「ここが巷で有名な漫画喫茶だな!」
下に下りると自動ドア。開くと「いらっしゃいませ」の声。
ここは前金らしい。そして変なカードを自販機で買う。
1000円、2000円、3000円…何種類かのカードが売られる。
金額によって滞在時間がことなるらしい。
「それにしても高いなぁ」
漫画喫茶の相場は知らないが、多分1000円から始まるのは高い。
漫画喫茶は他にもあったが、もう入ってしまったから退出しづらい。
とにもかくにも、早く俺の中の
「釣りロマンの風」
これが消えぬうちに「釣り吉三平」を探さなくては。
色々な漫画があった。
おそ松くん、宇宙戦艦ヤマトエヴァンゲリオンなどなど
そしてあった!!釣り吉三平。
釣り吉三平コーナーには、何やら電子掲示された数がある。それによると、昨日この本を読んだ客は、1日で11冊読んでいる。さらに一昨日の客は23冊。
「俺は8冊読めば上等かな」
なんて思って1冊目を読んだ。
何故かわからないが、ここの漫画喫茶は、金をどんどん払わなくてはならないシステムらしい。
なんてイカサマ!
でもしょうがない。でもヤバいことに、俺、1冊読むのに2万近く払わされた。
辺りもガヤガヤうるさい。制服姿の男女店員がうろつく。隣のオバサンが、本をバンバン叩く。その時!
「三平!釣れっ!釣れっ!」
釣った〜〜!!
ふう、やっと1巻終わった。
ジャラジャラ、ジャラジャラ。
銀色の玉がたくさん出てきた。店員が俺に近づき、箱を渡す。
「これに移せというのか?この輩は」
結局、俺は釣り吉三平を8巻まで読んだ。そして何故か、始めの2万円は返却され、逆に1万円くれた。
ずいぶん良心的な漫画喫茶だった。そして釣り吉三平は、俺の中の「釣りロマン風」をあおり続けている。