車中にて

 今日は山の手線に乗った。乗ってお茶飲んで、ハイっ、準備完了!
本読まなきゃ。今日は待ちに待った、小島信夫さんの「馬」の取り寄せが完了した日なのでね、もう、電車、さいこーっ!!

「あいつ、ぜってぇアキバで降りるよ」

うっせぇなぁ

「え〜あたしは御徒町だと思うなぁ」

だからうっせぇよ、どこでもいいだろ。

「お前、マジ読みあせぇ。あの紙袋見ろよ。ちょーアキバ袋じゃん!!」

うっせぇな、じゃあ三越の紙袋持てばいいのかよ。

「あったまいぃー」

うん、お前ら、マジ頭いい。ノーベル文学賞やるよ。

紙袋持った男に、俺の隣に座るカップルはアキバだの、紙袋だのと話を盛り上げる。そしてアキバ話はクドイ、クド過ぎた。
結局二人は田町で降りたのだが、(山の手線の内、田町で降りるカップルも、アキバで降りる男もそう変わりないと思った俺)田町までアキバ話はもった。話がわき道にそれる、そんな素振りはまったく見せない。

「彼氏さんよ、青メガネが似合ってないぜ」
そう、青メガネがかなり浮いていた。多分、メガネバスターで3000円のやつ。
「彼女さんよ、白いダウンジャケット、黒ずんでるぜ」
そう、白ダウンがかなりすさんでた。多分、地元ユニクロで3980円のやつ。
多分このカップル、今年のクリスマスでお台場に行く。
念願叶ったお台場進出。
多分、チキンライスが一番の贅沢品と思っているカップル。
鳥の丸焼きには手が出せないカップル。
ダウンタウンの松っちゃんを「松本キヨシ」と答えちゃう彼氏。
ドラッグストア「マツモトキヨシ」の社長が松本人志と答えちゃう彼女。

そして紙袋の男はアキバで降りた。
「アキバで絶対降りる」
そう断言した彼氏に、少し頭が下がる思いをした僕の気持ち、プライスレス。