下町ボーイズシリーズ2 〜ボーイズの憂鬱〜

 下町ボーイズの1日は午後の3時半過ぎから始まる。
ボーイズは活発だ。
3時半から始めること。それは
ガールハント。
というのは真っ赤な嘘で、男児の体がぶつかりあうフットサル。
要するに…


ボーイズの掟その1。
「ボーイズはモテてはいけない」


ここで軽く下町ボーイズのスターティングメンバーを紹介する。

W君。(会員1)
嫌いな食べ物、メンマ。

T君。(会員2)
座右の銘、「言うなよ!」

D君。(会員3)
悩み、「俺、静岡出身なのに下町で良いだら?」

…ボーイズの紹介なんてこんなもんでいい。


ボーイズはフットサルが終わると、豪遊に出る。とはいえ、大して金はない。


ボーイズの掟その2。
「千円札を10枚一束にして財布に入れる」

ボーイズの豪遊は「吉野家」から始まる。
とりあえず安い物で腹をタメなくてはいけない。ただ、食べる前に酒を飲むことは、あまり体に良くないことを心している。これは、ボーイズ各々が昔お袋から習った知恵である。決して「発掘あるある大辞典」などという、山の手の奴らが見ているような番組で仕入れた知恵ではない。

そう。
ボーイズは母親から社会で生きる知恵を教わる。

ボーイズの掟その3
「山の手カブレの行為は厳禁」


そんなこんなでボーイズたちは行き着けの「レッドゾーン」へと向かう。

レッドゾーン。略して「レッゾン」
ボーイズたちの合い言葉。

要するにこれは、「つぼ八」「和民」を指す。
ここだけの話だが、赤い看板の居酒屋をボーイズは「レッゾン」という。
もちろん、新宿などでこの言葉を発しても通じない。

ボーイズの掟その4
「飲みはレッゾン」

さて、店内に入ったボーイズだが、最初の一杯は贅沢できる。要するに、中生が頼める。

暗黙の了解

ただし、カクテルなぞ頼んだ時には、約15分は他のボーイズにシカトされる。
この間、D君が
「じゃあ俺、カシスオレンジ」
と言った、いや、
「カシ…」

の時点で隣にいた俺はT君の太ももを指で「ふんにゅ〜」した。

ボーイズの掟その5
「カクテルの名を2文字言ったら、ふんにゅ〜される」

2杯目からは焼酎のボトルになる。
ここで注意したいことが2点ある。
まず1点目は、
「絶対に鏡月などの焼酎を注文してはいけない」

和民で頼んで良い焼酎は「和民焼酎」である。

2点目は焼酎に付けるオプションである。緑茶はギリである。炭酸はNG。
最も良いオーダーは
「氷と水ください。あっ!水はミネ(ミネラルウォーター)じゃなくて水道水で!」

ボーイズの掟その6
「水道水もミネも同じと思う」

店を出るが、ボーイズの豪遊は終わらない。
スタバにてデザートを食する。
ちなみにここでは何を注文しても良い。これも暗黙の了解。なぜなら、ボーイズの習慣である「ワリカン」がここでは発生しない。

俺の好物
「抹茶フラペチーノ」
山の手に近づける瞬間である。ただし、山の手にはなってはいけない。その辺はボーイズにもプライドがある。
プライドを保つためには…
「とりあえずガムシャラに食べる」
ボーイズの場合
フラペチーノ≠飲む  フラペチーノ=食べる
急いで食べることが、プライドを保つこととしている。

こんなスタバでT君にボーイズが聞く。
「なんでお前は大学行かなかったの?」
T君は多分、普通に大学に行けたのだ。しかし彼は行かなかった。
T君は少々の沈黙の後、その重い口を開いた。



「バーガー屋で働きたかったから…」


……
………
…………バイトでできるじゃん。

ボーイズの掟その7
「あまり先のことは考えない」

T君は明らかに解答ミスをした。
多分、バーガー屋は大学に行ってもできる。
バーガー屋は逃げない。

そしてボーイズたちは帰路へと向かう。
スタバ滞在時間 15分。

ボーイズの掟その8
「スタバでは長居しない。長居=山の手」