中島みゆきのススメ

サッカーでいう「ホーム&アウェ−方式」が、「これほどまで精神面を左右するものとは」と感じた昨日。
とはいえ、別にサッカーなど観に行ってない。
昨夜は知人の結婚パーティーに招待されたので、会場である北千住に向かう。
知人の少なさがアウェ−の環境を形成する。


「今日場代いくら?」
「何?『バダイ』って?」

最近麻雀用語が、俺の日常会話の一端を担っていることに焦りを感じる。
結婚パーティーでは「場代」ではなく「会費」が適当だ。

でも周りの人もいけない。
それはパーティー中に行われたビンゴゲーム。
定番でしょ?ビンゴゲーム。
しかし昨夜のビンゴゲームは斬新だった。

「3番」
「来た!リーチ!」
ここまではOK。
「17番」
「うぉ〜ダブリ−!!」
ダブリ−はちょっと麻雀入っている。
「5番」
「来た!オープンリーチ!!」
ビンゴで「オープンリーチ」を積極的に活用しちゃう意味がわからない。ビンゴはみんなオープンだ。


麻雀の話はやめよう。


なにはともあれ、結婚パーティーから帰った俺は、少なからず気持ちが高揚していた。
パーティー中、酒で酔ったこともあったのか、俺はある男とケンカになり、相手が俺のアゴに一発アッパーを入れたから、俺も負けじと右、左、と拳を振るい、最後に相手の鼻先にストレートを入れ、うずくまったところに俺が裏蹴りをお見舞いしてやったというのは全部嘘で、酒でやや頭が火照っていた。


シャワーを浴び、歯を磨き、布団に入ると俺はMDを聴く。
これがミスの始まりだ。
ステレオからは中島みゆきの「僕たちの将来」をカバーした、ミスチル桜井和寿の声が流れる。
一気に高揚ムードはダウンした。
昨夜ばかりは将来など考えたくなく、そんな歌を聴いた俺はかなりシリアスになる。多分、マイクタイソンのアッパーを喰らった時より、俺の脳は参っていた。


パーティー中、1人の男がある女児を捕まえて熱く語っていた。
俺がその捕まった女児の知人に
「そろそろあの男、自分の夢を語りだすよ。時間にして50分くらい」
女児の知人は笑ってくれた。
多分、俺は男知人には熱く話す時が多々あるが、女児にはあまり話したくない、と考えている。
女児とは眉間にシワをよせるような会話ではなく、目尻の垂れ具合がいつもの2倍下がるくらい笑っていたい。


ということで、俺は昨夜1人、自分の将来を想像することとなる。
中島みゆきのタイミングの悪さを少し恨んだが。

多分俺は何年後かに、芥川賞を受賞している。
そしてあの赤ジュウタンの上を俺は闊歩する。
そしてインタビュアーに
「感想をお聞かせ下さい」
と聞かれ、
「全国民よ、俺様の小説を買え!そして俺様の感性にド肝を抜け!!」
と言い、審査委員の村上龍
「あんたの小説はマジおもしろいよ。エロいしエグイし。」
などとは死んでも言えず、
「あっ、え〜、ありがとうございます」
と、右手で自分の後頭部をさすりながらインタビュアーには答えるし、
村上龍さんには
「『愛と幻想のファシズム』がとても好きです」
としか言えない。


俺の将来はこんなもんだ。