ポテトフライの回

「きっかけは〜…フジテレビ!」
今朝のお袋の第一声はこれであった。
フジ対ライブドアの影響が、とうとう俺のお袋の頭にまで及んだことに焦りを感じた。
株価とか買収とかリーマンとか村上ファンドとか、そんなものはどうでも良いから、
とりあえずお袋を蝕むのは止めて頂きたい次第である。


このブログは午前9時30分に書かれている。
とても健やかな時間帯に俺は執筆している……はずがない。
実際は昨日から寝ていない。
午前5時に帰宅した俺は、何故だかわからないが小説を書く原動力が湧いてきた。
だからとりあえずウインドウズを開き、午前7時までの約2時間を執筆に当てる。
ついでマッキントッシュを開き、ジョージさんへのコメントを考える。
そしてお袋が起きて第一声がこの始末である。
お袋の株価は大暴落である。
今日は「ブラックマンデー」ならぬ「ブラックサタデー」として俺の歴史の1ページに刻まれた。
お袋、もうこれ以上「お袋株」は発行しないでくれ。


とはいえ、俺のバイタリティーも今日ばかりは大暴落である。
とりあえず昨晩、バイト先にジョージさんとHさんとその知人Oさんが来た。
3人の会話を盗み聞きすると、俺のイチオシ商品である「ポテトフライ」は食べたくないと話している。
そんな話を聞いて俺は、
「お前らさぁ、さっきから黙って聞いてれば言いたいこと言ってくれるじゃない。俺はなぁ、さっきから色々な客が『ポテトフライください』って言うのを、必死に我慢して受けているんだよ。だって俺、ポテトフライ大好きじゃない?その大好きな品をアイツらはモグモグ食べてるわけ。そんな俺の心境は尋常じゃないよね?そんな、他人がポテトフライを食べることにすら嫌悪感を感じてる俺が、君たち3人には進んで提供しようとしているのだよ?そんな俺の天変地異とも言うべく良心的なサジェスト(=商品を薦める)を、君たちは『飽きた』だの『しつこい』だの言って断る気なの?」
と、かなり激怒して、思いきり木製の椅子を蹴り上げたというのは全部嘘で、
「ポテトフライ食べようよぉ〜」
と、少々ゴリ押し気味に薦めた。
が、3人にはこの願いは届かないことに気付く。
「どーせ、マックかモスあたりで食ってきたんだろ。」
と、少し大人になって諦め、
「じゃあ『やきとり』なんてどうだい?」
と、俺はムーンウォーク気取りの足取りで3人に近づき、『やきとり』を食べる仕草をした。


「気持ち悪い」


えっ?何、その態度。気持ち悪い?あぁ、聞き間違いだね。その「気持ち悪い」は、
俺が気持ち悪いのではなく、「やきとりなんていう、胃にはとてもヘビーな物を食べると気持ち悪くなっちゃうよ〜!」
の「気持ち悪い」でしょ?
うん、そうだ。きっとそうだ。ニュートン万有引力がそうであるくらい、そうだ。
結局、どういう意味の「気持ち悪い」かは聞かずにいた。
意味を聞いてそれが「凶」と出たら、多分俺はポテトフライと共に心中していただろうから……



でも、もしポテトフライと心中できたら、今日の新聞は
「ポテトフライ心中事件」
として一面を飾っていたんだろうな。事件名の中心は俺の名前ではなく、「ポテトフライ」なんだろうな。
そしてお袋の株価大暴落だって阻止できたんだろうな。