ソング イズ ストーリー

花粉が去年1年間の飛散量と同等の量が飛んだ先日の話。
俺は、ファイブフォックスの社販セールを催している原宿にまで足を運んだ。
だが、この日の俺に居場所はなかった。
どこにいても花粉は俺の鼻孔を刺激し続けるから、ゲンナリ気分が先行逃げきり。
そりゃあ、原宿の道でだって「デューク更家」のウォーキング歩行で闊歩するさ。


その晩、俺は知人のライブを観に赤坂に足を運ぶ。
まぁ所詮、赤坂は俺の庭なのだが、久しぶりに散歩に来たから少し迷った。
実はこの知人のライブに足を運ぶのは2回目で、前回はカラオケボックスのソファでジャンプして、天井に頭ぶつけちゃうくらいハイテンションだったので、今回は一飛びもせずに聴いてみた。
そう、まるで俺はプールの監視員のような眼差しで彼を眺め凝視する。そしてほのかな緊張。
緊張?
何故にお前が緊張?知人のライブで何故緊張?
別に良いのだ。俺には俺の見方があって、俺なりの心の持ちようがあって、俺なりの解釈がある。
今回は緊張して観たいのだ。
知人の話では、今回のライブに音楽関係者が来ているらしい。俺の意味のわからん緊張なぞ、彼にくらべたら微々たるものだ。
そう。俺の緊張はただのエゴ。でも実際、俺の心臓はかなりビートしていたし、熱かった。
俺の知人はボーカルを担当する。
音楽にウトイ俺は、彼らがロックバンドなのかどうかわからないが、少なくともヘビメタではない。
そして、例えるなら多分ジャニーズのトキオだと思う。
ボーカル・ベース(確か2人)・キーボード・ドラム
ただ、松岡君の担当は女性。
キーボードを弾く女性の姿は何となく優しさを感じ、男性の場合は鋭さを感じる。
ボーカルの知人は、周りの観客と一体化したかったみたいである。
それはどんなミュージシャンでも同じ感情だろう。ただ、今回俺は彼の舞台を邪魔したくなかった。
決して一体化は邪魔ではないし、それがライブの理想なのだろうけど、俺は決して一体化せず、俯瞰して聴いていた。


ライブが一通り終わり、部屋の出入りが激しくなってきた。
俺は居場所をなくしたため、外に出て煙草を吸う。ライブ後の煙草はどうも感傷的になりやすい。
少し冷えたので再び中へ。
Mチャンに会う。
Mチャンはボーカルのガールである。
Mチャンは泣いていた。好きな歌が2曲歌われていたらしい。
感動を与えたボーカルは偉いと思う。
そして感動を素直に受け止めたガールも、それもまた偉いと思う。
俺が今回のライブで学んだことはこんなことであった。