社会の底辺で耳をすます

駅から家路を急ぐken。そして社会の秩序、ルールに束縛されたken。今となっては小さくなったkenの背中が、稟とした態度を崩さない社会の盲目的な圧力を物語る。胸すら張れないkenは家路の途中に電話する。kenは己の存在を証明する「誰か」に電話する。電話という媒体を駆使した間接的会話は、kenの心に雪解けを知らせ、寒さで丸めた背中を伸ばす。kenはここにいる。社会の底辺を担う一員としてkenはいる。その事実の証明をkenは第三者にゆだねる。kenを取り巻く社会の気圧を一時でも払拭し存在証明したいから、kenは明日も電話する。次は君かもしれない。