営業に憧れた瞬間

「給料日が近づくにつれて社会人のテンションは上がって行くのだよ」
と俺は悟った。3週間目にして悟った。
そんなこんなで俺の給料日も近づいてきたわけで、
そりゃ満員電車の中で俺が他人の足を踏んでしまった時に舌打ちされても、
「さぁ〜せん!本当にさぁ〜せん!」
とガムシャラに平謝りする。多分学生の頃なら、
舌打ちされた瞬間に相手のアゴをデコピンくらいはしてただろうけど、
今の俺はガムシャラに「さぁ〜せん!」で、最後はデコピンを自分のコメカミにやって
「全く俺ったらぁ〜」
くらいは言える。


「営業ついでにボーリング」
これが今日から俺の営業に対する
「MY・理想」
となった。
俺は一度で良いから営業をサボってパチンコを打つような「ドラマ営業」がしたい、
と思っていた。
だがここへきてボーリング案が浮上することとなった。
誰とは言わないが、新入社員にして「ドラマ営業」をした奴がいる。
俺はかなりソイツに嫉妬して尊敬した。


「ドラマ営業inボーリング場」


多分一般的にモテない。
ただ俺からはモテる。かなりモテる。
いつもは「10」くらいのボールを投げているのに、
「ドラマ営業」ということで「15」のボールを持ち、帰社したら肘が痛いとか。
俺はそんなリーマンを一日だけやりたい。
ある年代で流行った「ボーリングデート」改め「ボーリング接待」
あっても良い。
別会社の上司と行ったら、俺は積極的にガターを狙ってて、
「またやっちゃいましたよぉ〜」
とか後頭部を撫でながら言う。もし上司がガター出したら、
俺は慌てて画面の「修正」のボタンをマウスでダブルクリックしちゃうくらい押して、
すぐにストライクを記入する。
結局上司は300のパーフェクトゲーム


つまらない。


俺にはまだ「ドラマ営業」は早かった。
「電車内で自分の首筋をハンカチで拭いちゃう」
そんなことができた時が、俺の「ドラマ営業」開始の時かもしれない。