4番代打長島

タイトルを見ると、屋上から札束をバラまくという、バカでアホでバブリー野郎みたいだ。
4番に代打で長島はかなりのバブリーで、それは一塁代走イチローみたいなものである。


俺は最近この「長島(仮名)」なるネーミングの野郎にコテンパンにやられている。
とりあえず通勤時間が片道2時間半という「遠くの日本より近くのグアム」が一番似合わない男なのだが、
まぁそこは素直に頑張りを認めてあげたいところなのだ。(なんて俺は優しいんだ!)
ただそれ以外は全く許せない「スポーツ刈り」なのだが。
社会人で「スポーツ刈り」(通称「スポ刈り」)を久しぶりに見た俺は、
「こいつは流行先物取り引き企業を自分の中で立ち上げたのだろう」
と思うことにした。
ただ、その先物取り引きは確実に失敗なことは、素人目の俺にでもわかる。


研修期間ということもあり、俺たちは「検品作業」という、それはまるでアルバイトでやったことがあるような仕事に従事している。
もちろん、その際のスタイルがスーツなのでは困るので、各自作業着なるものを持参するわけなのだが、
ベーシックなスタイルはもちろんジーパンなのである。ジーパンは作業するのに無難な代物である。
ただ長島は「スポーツ刈り魂」を忘れなかった。


「学校ジャージ」

パープルブルーな学校ジャージ。通称イモジャー。
多分黒いサングラスでもかければ、パチモノの青レンジャーあたりにはなれるだろうその様。
もちろんバックプリントには母校のネームが楕円形に描かれる。
胸元と左太もも上部あたりに「長島」の刺繍が施されているから、会社の名札は必要がなくなる。
もうコテンパンにやられた俺は、仕方なくこう思った。
「多分彼の検品は体育なんだ。そりゃ体育なら俺だってスポ刈りだよ〜。ちょースポ刈り!美容院なんか行かないで床屋。床屋のおじさんに今日はどうする?なんて聞かれたら、スポ刈りでモミアゲはテクノで!」


最近同期であるこの「長島」と帰るのが少し辛くなってきた。
俺はバス停で待つ時間をコーヒーと煙草に費やすのだが、長島はここでも先物取り引きをするのだ。


「ソフトクリーム」


バス待ちに「ソフトクリーム」はかなりフライングである。せめて風呂上がりまで待ってほしいし、なんせスーツに合わない。
社会人というネームバリュー(社会人という言葉に価値があるのかはわからないが)をバニラアイスでベトベトにする長島。
バス停で食いきれないアイスをバス内に持ち込む長島。
金八先生のごとく、ショルダーバックを前掛けしちゃう長島。
スポ刈りなのに「ねぐせ」がひどい長島。


でも結局、俺はこんなキャラの長島が好きで、彼こそ「4番代打長島」という名にふさわしい男だと思った。