MAXコーヒー

みんな知らないと思います。
でも、知っている人はいるかもしれないとも思います。
茨城県は、
いばら「ぎ」
ではなくて、
いばら「き」
だということを。
僕はそれを
「いばらぎ、ではなくて、いばらき」
というタイトルの本を読んで知りました。「ぎ」と「き」を間違えると、大抵の茨城県人は怒るので注意してもらいたい。
そんなタイトルの本ですが、中でも「MAXコーヒー」の話はべらぼうに面白いのであります。
「MAXコーヒー」は確か、千葉と茨城と群馬と埼玉で限定発売しています。
でも僕、見てしまいました。


「千葉限定!MAXコーヒー」


しかもこれが都内であるA駅付近の自動販売機で売られていたのであります。
そして紙切れに一口メモ、みたいな安い手法で、


「千葉限定!MAXコーヒー」


これは茨城、埼玉、群馬に対する東京下町からの明らかなる挑発であると僕は悟りました。
でもそんな安っぽい「一口メモ」には目もくれず、僕、結局「大いなるMAX」を求め100円を入れたのであります。


そう、


挑発した上にワンコインという無駄な良心的販売に、少なからず僕はその自販機に屈服しました。
そして僕は幼き頃の思い出を回想しました。
僕は昔、よく千葉県の御宿にある海岸沿いの旅館に旅行へ行ったのですが、
その旅行の友達へのお土産に僕は、何の迷いも見せずに「MAXコーヒー」を買ったのであります。
鈴の付いたタヌキのキーホルダーでも、おみくじ付きの幼き子供に大人気であろうキーホルダーでもなく、
黄色と茶色で色彩された紛れもなく純粋な「MAXコーヒー」を1本。


僕はそんな思い出に浸りながら、チビチビと「MAXコーヒー」を飲みました。
「うぉ〜、すぅんげぇ〜MAX!」
みたいなこと、叫びたいくらいMAXなんです。
木更津キャッツのブッさんの気持ちが伝わるのです。(木更津キャッツアイ日本シリーズ〜 参照)
MAXコーヒーが、僕の幼き頃にお土産として買って飲んだあの「MAXコーヒー」の果てしのない甘味を思い起こさせます。


…友達のお土産を飲んだ?1本しか買ってないMAXを?

……
はい、飲みました。
だって……飲むでしょ?MAX。
そんなん、車の中でずっとMAXコーヒーを幼き頃の僕に握りしめさせておくのは、
完全なる「幼児虐待、殺生バンザイ」
であります。


旅後の僕は幼いながらも、友達のMAXを飲み干してしまったという罪悪感に耐えきれず、
とうとう親父に泣きすがります。
そんな僕を見て親父はポッカコーヒーやジョージアコーヒー、終いには何を血迷ったのか、
幼き僕にブラック無糖コーヒーを手渡し、
「それで行け」
というのです。
幼児にブラック無糖を手渡すのは、ただのハードボイルドであります。
でも親父、泣いている僕を見るに見かねて、MAXコーヒー、買ってきました。
無知であった幼き頃の僕は、そんな親父を偉大なる戦士に見えました。
まぁ、今考えれば、僕の駅から電車で3つ、松戸は完全なる千葉県なのですが。
「MAXコーヒー」
幼き子の心をわしづかみにする彼に、僕は尊敬の念と多大なる敬意を表します。