コネクションの使い方

夢とか希望とか未来とか美化して、現実とか絶望とかを醜態極まりない物と思っている諸君に告ぐ!
「コネは嫌いかい?」
甘く切なく今にもとろけそうなボイスで、
「コネは嫌いかい?」
多分、そんな調子で囁かれては、今にも心臓にサブイボが立ってしまうだろうと僕は思う。


現代社会においても、コネクションという事前に用意されたであろう豪華ディナーのような代物は健在なのだろう。
いや、健在なのである。
健在だからこそ、僕はそんな豪華ディナーをつい最近頂くことができたのである。
「コネクションは社会に蔓延る悪のうちの1つだ!」
などと声高に叫んでいた昔の僕を、今の僕はブリーズチックな溜め息で天高く舞い散らしている。


その業界人が形成する、まるでスパイラルのようにはり巡らされた伝手は、僕が想像していた以上に確立されていて、社会の邪悪な甘い汁を吸い始めた僕は、若いころに持っていた「コネアレルギー」を完全に払拭してしまった。
地位とか名誉とか金とか物とかの美的想像社会においての悪は、善良で健全なセリフと僕の中で解釈されるようになった。


最近、知り合う人間が変わってきている。
知り合う人間が変われば衣食住も変わるもので、ローレックスの時計を僕がこの歳で頂けるものなどとは全く予測しなかったもので。
ローレックス、必要以上に重量感を感じる。
金曜の夜は大体上司に連れられ、六本木ヒルズのフランス料理を食する僕。
キャビアはそれほど旨いわけではないことも知った。
フォアグラは肝臓に疾病を生じた、いわば不良品なのに、人々は
「一度は食べたいね」
などとほざく。


最近はキャッシュカードが狙われているので、僕は常に現金を所持している。
入社3年目にして70万の報奨金を手渡しされた時、僕の背中を一筋の冷や汗が伝った。
先月の給与明細を開いたとき、「特別定期手当て」という欄に0が6桁ついた数字を見て、僕は3度、人さし指で0の個数を数えた。それはまるで宝くじを当てることから始まるドラマのようだった。


コネは人生を変えた。
僕の社会人第一歩は、いつか罰があたるのではないか、というくらいの踏み込みを見せた。