0勝0敗0S そんなマイライフ

多分俺をベールボールで例えると、5回の裏、カウントが2ストライク2アウトランナーなしで降板させられるピッチャーだと思う。
俺には勝ち星がつかない。


こんな後ろ向き例えをしてしまうのも、結局のところ俺に「ダメな野郎だ」と言ってしまった「アイツ」のせいである。
結構ナイーブな俺には、そんなありふれた罵倒でさえグサリと心に突き刺さるのである。
俺の言う「アイツ」は「ダメ」の神髄を極めているお方で、そんな「アイツ」に「ダメ」呼ばわりされてしまった俺は、ヘコみにヘコまされたわけである。


「お前はプロサッカー選手を諦めた時点でダメだよ」


こんなシビアな言葉を投げられたのは生まれて初めてで、多分これは横浜のクルーンを凌ぐMAX162キロをスピードガンのゲージに叩き込むだろう。
そしてうかつにも俺はそれをデッドボールするのである。
まさしく死球
人生において四球をしたことがないだろう俺が、アイツに死球を喰らわされるとは。
でも俺は逃げずにそのMAX162キロを喰らったのである。
それは清原顔負けの喰らい方で、多分マンガの世界ならメダマが飛び出たりして、
「あれ?メダマ、メダマ」
みたいに、メガネを探すのごとくメダマを探すに違い無い。


そんなネガティブな俺は今日のホリデーに、久々にバカ妄想をしてみたのである。


「もしも俺がゴレンジャーの一員だった時のポジショニング」


俺が思うに「もしもシリーズ」は妄想人が妄想するのにうってつけなモチーフである。
そして妄想人は多分、自分が中心となりたい一心だろうと思う。
妄想人は決して自分を「ミドレンジャー」にはしない。
「ゴレンジャー」を妄想モチーフにした場合、女性は「モモレンジャー」しかないのでフリだが、
この世に蔓延る猛者どもにとってこの「ゴレンジャー」は持ってこいである。
そんな妄想猛者人な俺は、積極的に俺を「アカレンジャー」に仕立てる。


アカレンジャー」はバッサバッサと雑魚どもを叩き切る。
そんな雑魚どもに紛れて何故かショッカーが現れる。アカレンジャーの記憶で「仮面ライダー」と「ゴレンジャー」が入り乱れている。
終いにはウルトラマンまでも出てくる始末で、それを妄想したアカレンジャーは、
円谷プロダクションにはアポ取って無いよ」
などと危うく妄想逃避しそうになるのだが、こんな様々なキャラクターが入り交じるのは「ファミコンジャンプ」以来という懐かしさに溺れて耐えた。
何故かわからないが、「戦隊もの」の多くは、切られる時に火花を散らす。
「妄想アカレンジャー」も例外ではない。
背中から思いきり火花を散らした、というか噴いた。
そして何故かその火花をショッカーが思いきり喰らっている。
そしていつも
「フュ−、フュ−」
しか言わないショッカーが、
「ちょ、ちょいタンマ!あっ、ゴメン!タイム、タイム、ま、待てよぉ〜」
と妄想アカレンジャーに切願する。
そんなことはお構いなしに、妄想アカレンジャーはショッカーたちの背中にあるファスナーをずり下ろす。
ショッカーの弱点は切られることでも殴られることでもなく、背中のファスナーを下ろされることだ。
テレビで彼らがファスナーを下ろされることは、極めて放送事故に近い。
いや、紛れも無く事故。
でも妄想アカレンジャーは下ろしに下ろす。
なんせ人生がかかっているのだから。
弱肉強食の世界に放送事故もコードもない。


ショッカーの着ぐるみを全てはがした俺こと妄想アカレンジャーは、何故かドギマギしていた。
最近の「戦隊もの」のラストボスは、どうしたものか、セクシー女子が多い。
多分、今もなお日曜の朝8時から「戦隊もの」はやっているのだろうけれども、朝からあのセクシー衣装を身に纏ったラスト女子ボスは、精神的にも手強い。
精神的にやられるというのは、妄想アカレンジャーも例外ではなく、


「セクシー女子じゃないっすかぁ〜」

などとハニかむ。
そしてそんな女子を攻撃することができない妄想アカレンジャーは結局、額を地面にゴシゴシ擦り付けて平謝りするのだが……


やはり俺は「ダメ」な奴だと、妄想後に思った。
ラストボスに額地面ゴシゴシは、子供たちの「ユメ」を「ダメ」にしてしまう。


あっ。


「ユメとダメ、紙一重じゃないですか!」

そしてこう正当化。
「ユメを諦めてダメ。ダメ、そんな悪くないじゃないですか!」


「ダメなアカレンジャー


世の男性にはウケるのではないか、と思う俺。


正義の味方がダメとなる瞬間、世の子供たちの夢を台無しにする変わりに、世の大人たちの救いを与えられるに違いないと思います。少なくとも俺、そんなアカレンジャーに希望を感じます。