ホワイトバンドの回
俺にはよくわからないが、ホワイトバンドというものが最近、いや、ちょっと前から流行っている。
俺は人生の中で、手首に何かを巻いたことが数回しかない。
時計。
リストバンド。
ワゴム。
多分この3つが俺の中で着用頻度が高い物たちなのだが、
1番着用頻度が高いだろう物が、
「ワゴム」
これが事実。
でも、いくらなんでもこれでは満五十歳、夫の収入が少ないが為にスーパーのレジで働いているパートの奥さんが、
「あ〜ワゴムの置き場所がないわ〜、しょうがない、マイリストに巻いておこうかしら的リスト」
だと民衆からバカにされてしまうので、俺は致し方なく知人から、
「お前、何腕にワゴムなんか巻いてんの?」
とか言われたら、すかさず、
「お前チョ−パンピーじゃん!これは今流行りの『黄土色バンド』っていうんだぜ!略して『オーバンド!』」
俺はこの一言を叫んで優越感に浸る。
優越感ほどの麻薬はない。
俺はそう自負している。
ただ「黄土色バンド」までは何とか「ホワイトバンド」の新色バンドとして民衆をゴマかせているのだが、
略して「オーバンド」
ここまで調子に乗って言うと、結局「オーバンド」は「ワゴム」の名前としてメーカーが使っているので、
「黄土色バンド」の正体が「ワゴム」だということがバレてしまう。
ただ俺は思う。
この腕に巻いている「ワゴム」が、もしスーパーで働くレジの奥さんが巻く「細いワゴム」ではなく、
あまり日常で使うことのない
「極太ワゴム」
これならバレることはないだろう。
そしてもし「ホワイトバンド」のように、
「黄土色バンドは何に対してのチャリティーなの?」
そう聞かれても、
「これは夫の収入が少ないが為に、スーパーのレジで働く奥さんたちに対してのチャリティーなのだよ。」
俺はこう胸を張って言える。
最近、よく手先がシビれることがある。
体調不良だと思っていたが、実は「極太オーバンド」が俺の血流を止めていたらしい。
「極太オーバンド」をファッションとして使うのは、やはり規格外らしい。