名称未設定フォルダー5

俺の周囲にはギャンブル好きが多数いて、パチンコ・
パチスロ・競馬・ロト6・麻雀などが彼らの遊びにあたる。
上記のギャンブルに「競輪」が加わった時、俺は彼らと縁を切ろうかどうかを切実に考えようと思う。


先日、俺は何ヶ月ぶりかにパチンコを打った。
俺はパチンコを初めてこの方、負けた記憶がほとんどない。
トータル的に見た場合、ほとんどの者たちが負けに属するようだが、
俺は多分勝っていて、この何ヶ月ぶりかに打った今日も勝った。


まぁ、勝ち負けはどうでも良い。どうせ娯楽である。
生活苦になるような負け方はしない。
俺は、負け方の上手いギャンブラーこそギャンブルが上手い人だと思う。
その点でいけば俺はパチンコが上手い人、ということになる。
まぁ諸君、見習いたまえ。


さて、何度も言うが、俺は久しぶりにパチンコをしたのである。
パチンコは孤独だ。
ひたすらに銀玉を打ち、その銀玉がスタートポケットに入る行方を追う。
そしてスロットが回転し、目を揃える。
リーチがかかれば興奮するし、それがスーパーリーチに発展した時、
我々は残り1列、回るスロットの出目に目を凝らす。
俺も目を凝らす。
大抵、俺は当たりが予想できる。
感覚でわかる。だが感覚だから説明のしようがない。


パチンコを打つ人の中で、リーチ中に台をこれでもか、と叩く者がいる。
そして今日もいた。
それはキャバクラ嬢の風体をした女で、その女は俺の席から3つ離れた台に座っていた。嫌な香水の匂いが俺の鼻を刺す。
その女は手のひらの土手辺り、要するに「ショウテイ」のような感じで台をガンガン叩く。その叩き方は尋常ではなく、振動が俺の台にまで響く。


「叩いて当たるなら苦労しねぇよ」


と思っていたら女は当てた。

世も末である。
叩いて当たるならパチプロいらずだ。
俺は無性に叩きたい衝動にかられる。
俺は大当たり後、約150回ほど回している。
そろそろ連チャンして良い頃合だ。
それなのに、
ガンガン女が「ガンガン」して当てた確立95%

リーチがかかった時に「ガンガン」を行う確立100%

俺が次に当てるだろう確立、プライスレス。

ニコスカードのCMなどどうでもいい。


俺はガンガン女を睨んだ。
「うっせぇ、このアマ」
とでも言わんばかりに。

ガンガン女も俺を見返す。
「当てたきゃ叩け」


俺は目をそらした。
俺の負けだ。
でも、叩いちゃいけないよ、姉さん。
叩いたら店員さんに言い付けてやるんだから。


すると1人の工事現場風な男がやってきた。
何やらそのガンガンと仲良く話している。

「彼氏さんか!」

俺の心は躍動した。
俺は言いたかった。店員さんに言う前にこのガンガンについて言ってやりたかった。
「この人、リーチかかる度にガンガンやるんですよ!しかもショウテイで!台が壊れちゃいますよ!周りのお客さんにも迷惑ですし、止めさせた方がいいですよっっっっっっっ!」

もう「っ」が一杯になるくらい語尾を強調して言ってやりたかった。
それなのにガンガン女は、彼氏がいるのにも関わらずガンガン女は、
性懲りもなく「ガンガン」やる。

その時。
「おい!」
とうとう彼氏の出番である。


「俺の怒りを代弁してくれ、彼氏」


「やり方がちげぇよ」


なに?やり方?何それ。
やり方の問題じゃなくて、そこは彼氏として彼女に、
「台が可哀想だし、周りに迷惑だから、ガンガンはよそうゼ」
じゃないのかい?


「そういう時はこうやるんだよ」
と言った時、彼の右手は「グー」だった。
「パー」じゃなく「グー」
そして台を叩く、いや、殴る。
「ガンガン」の音が可愛らしく思えた。効果音で表すなら、


「ギャオン、ギャオン」

音が違う。

「えー、私にはできないよー」

いや、もういい。お前らはもういい。

「ほら、見てみろよ」

「すごーい、当たってるー。しかも確変じゃーん」


世も末だ。
殴ると当たるのなら、パチンコの攻略本もいらない。
とりあえず、これからは打つ前に台を2、3発殴っておこうと俺は思った。